月光

 リベルダムに向かう今日最後の便は、もう出てしまった。
 暮れなずむエンシャントの町を、城門に向かって歩く。とぼとぼと、自然と俯き加減になる。
 レインは今、とても惨めであった。
 聖杯を盗んだあのゴブリン三匹にはまんまと逃げられるし、装備も荷物も、ひいては金もない状態でこんな都会のど真ん中で一人ぼっちである。
 ゴブリンはまた探せばよい。だが、あのように逃げた男を、どう追えばよいのだろう。
 町の通りに点在する魔法仕掛けの街灯に、雇われ魔道士たちが明かりを灯している。路地の奥にある民家の窓から、ぼんやりとしたランプの明かりがもれていた。子らのはしゃぐ声と、両親のものと思しき声が、食卓の音とともに聞こえてくる。
 レインはため息をついた。
 恋をするのは難しい。みんな、いつどうやって、誰に恋の仕方を教わるのだろう――。
 とにかく、今日はリベルダムには戻れない。エンシャントに泊まろうにも金がなかった。
 頭を切り替えなければ、とレインは暗くなった空を見上げるようにして背筋を伸ばし、胸を張った。肺の奥まで息を吸い込み、深く吐く。
 ゴブリンの動向を知る意味も兼ねて、猫屋敷に泊めてもらおう。急いで町を出なければ、城門が閉じてしまう。
 レインはエンシャントの南北を貫く大通りを、南門に向けて小走りに駆け出した。この通りには、宿屋や酒場が立ち並び、まだ人通りが多い。
 南門は三つある城門のうち最も大きな門で、東と南からやってくる者がほとんどこの大門をくぐらなければならない。日暮れまでに帝都に入ろうと町に入ってくる連中が多い。だが、レインと同じように街中に取り残されないように、城門へ急ぐ者も少なくなかった。
 冒険者ギルドもこの大通りの端にあった。癖になっているのか、ちらりとそちらへ見るともなしに目をやって、レインはあっと声を上げた。
 ギルドの入り口扉をくぐって出てきた男に、見覚えがあったからだ。
「セラ」
 中央帯の花壇を乗り越えて駆け寄ると、黒い長髪の剣士が冷ややかな視線をこちらに向けてきた。羽織った薄い外套の下から、凝った意匠の剣の柄がちらりと覗く。
「いいところで会った」
「……何かわかったのか」
 再会の挨拶とか近況報告とかないのか、と思わなくもないレインであったが、いきなり親しげに挨拶するセラというのも気味が悪い。
 少しは、と苦笑ぎみに頷きながら、レインは町の外に向かって歩き出す。
「とにかく、私はこれから賢者の森に行かなければならないんだ。エンシャントに用がないなら、一緒に来てくれ。話しておかなければならないこともあるし」
「賢者の森?」
 怪訝そうな顔をしたセラを、レインは肩越しにちらりと振り返った。
「猫屋敷の噂を知っているか。私はあそこを拠点にしているんだ。魔人や神器に詳しい賢者がいる。あんたにとっても悪い提案ではないと思う」
 魔人という言葉に、セラがわずかに反応した。探るようにレインを睨みつけたかと思うと、彼女を置いてさっさと歩き出す。南門のほうである。
「行くぞ」
 相変わらずの様子に、レインは小さく息を吐いて、大股にセラを追った。
 二人は閉まりかける城門を、すり抜けるようにして町を出た。レインのテレポートは複数人を連れていては大した距離を移動できないが、エンシャントから賢者の森までなら何とかなる。
 賢者の森の入口に立ったときには、日は完全に沈んでおり、東の山際から白々とした三日月が昇っていた。セラの魔法ランプと月明かりを頼りに、暗い森を歩く。獣の気配がないこともなかったが、オルファウスの魔力が覆うこの森には、それほど凶悪な怪物は存在しない。駆け出しの冒険者ならまだしも、彼女らなら警戒にも値しないだろう。
 猫屋敷を目指して森に隠された小道を歩く間に、レインはアンティノ商会について語った。アーギルシャイアはアンティノ商会に知恵を貸し、戦闘用の魔道生物を生み出している。
「アンティノ商会とアーギルシャイアのつながりは、まだあると思ってる。アンティノ本人が否定しなかった」
 頭上には木々の枝葉が、黒々とした影となっている。その張り出した梢をくぐりながら、彼女は続けた。
「……アンティノ商会の研究員だったシェスターという女が仲介になっている。あんたのお姉さんと同じ名前だな」
 少し後ろを歩くセラを、肩越しにちらりと窺う。無言で下生えを踏み越える彼の表情に変化はない。
 シェスターとアーギルシャイアについて手紙で尋ねたこともあったが、その返事はなかった。見当違いなのか、あるいは――。
 そのうちに猫屋敷にたどり着き、レインはセラを屋敷に招き入れた。

 
 突然の訪問にもかかわらず、ケリュネイアは夕飯まで用意してくれた。牛のモツのトマト煮込みや、内海で取れたエビのフリッター、季節の野菜の炒め物――オルファウスに育てられたケリュネイアは、さすがとでもいうべきか、作る料理も美味い。父親のような繊細な味付けではないが、はっきりとした味の彼女の料理は、レインには好ましかった。
 半分以上、ここを我が家と思っているレインは、遠慮なく料理を口に運んだ。だが、セラはそれらに一切、手をつけなかった。テーブルの脚に月光を立てかけて、つんと澄ました様子で脚を組んでいるさまは、人になつかない野良猫を連想させる。
「セラの分まで食べるんじゃない。レイン、あんたはちょっと、遠慮したらどうなの」
 空になったモツ煮込みの皿を差し出したレインに、ケリュネイアは顔をしかめた。三杯目にはもうちょっとそっと出せ、と言いながらも、皿を受け取って立ち上がった。
「遠慮しないついでにお金貸してくれない? 金がなくてリベルダムまで帰れない」
 台所に引っ込んだケリュネイアに声をかける。新たなモツ煮込みをよそった皿を持ったケリュネイアが戻ってきた。呆れたような顔をしている。
「あんた、何しに来たのよ」
 目の前に置かれたモツ煮込みにフォークをつけながら、レインは言った。
「街中で例のゴブリンを見かけた。聖杯を盗んだやつらだ。荷物を取りに戻っている暇がなかった」
 少し固くなったパンをソースに浸して、モツと一緒に咀嚼して、飲み下す。そうして、レインは続けた。
「聖杯を狙うアーギルシャイアはリベルダム近くに潜伏していると見ている。ゴブリンたちの動きに気づかれたかもしれない」
「……なぜそう思う」
 そう言ったのは、賢者の森に着いてからほぼ無言であったセラだった。レインに背を向けるように斜を向いて椅子に腰掛けた彼は、肩越しに黒玉のような瞳を向けてくる。
「さっきも言ったけど、アーギルシャイアはアンティノを利用していたようだ。で、そのアンティノは現在消息不明。青竜軍に囲まれたリベルダムから、アンティノがどうやって逃げ出したか……――」
 レインはそこでいったん、フォークを置いた。口をお茶で湿らせて、さらに続ける。
「――アーギルシャイアについてそれほど詳しく知っているわけではないけど、利用価値がないならアンティノを逃がしてやる必要はないと思う」
 リベルダムの周辺にアンティノ商会の秘密研究所がある、とレインはセラを見据えた。
「身を隠すにはちょうどいいだろう」
 セラは少しだけ口をつぐんだ。それから、
「それで、お前の言う賢者とはそっちの女のことか」
 とケリュネイアに視線をやった。ケリュネイアは少しばかりむっとしたが、彼女が何か言う前に、レインが頭を振った。
「違うよ。賢者はそっちの――」
 レインはテーブルの向こうの椅子を、顎でしゃくった。ダイニングテーブルの椅子の一脚に、クッションが敷かれており、その上に小さな白猫が丸くなっている。
 頭がおかしいのか、とでも言わんばかりに不審げなセラの視線を、レインは無視した。
「オルファウスさん、セラの話を聞いてやってくださいよ」
 のそりと白猫が丸くしていた体を起こした。そして、身軽な動作でひょいとテーブルの上に乗る。
「はい、何でしょうか」
 ぺろりとピンク色の舌を出した白猫に、セラの顔が渋くなった。驚きというか、嫌悪というか――気味が悪そうな顔をしている。
「見た目はこんなだけど、中身はちゃんと賢者だよ。ちょっと事情があって、猫の格好をしてるんだ」
「オルファウスと申します。よろしく」
 ぺこりと白猫は頭を下げた。
 セラは非常に胡乱げな顔をレインへと向けてくる。何というか、仲間の大半にいえることだが、不満を理不尽にレインに向けてくるのは止めてもらいたいものである。
「あー……胡散臭いのはわかるけど、本当にこの人が賢者なんだ。猫屋敷の賢者の噂くらい、知ってるだろう。もともと、こんな風じゃないんだ。ちょっとごたごたがあって、魂を猫に移している」
「だいたい、合ってますね」
 白猫がふわふわの腹を揺すって笑うので、セラはさらに気味が悪そうな顔をした。
 セラさんは――と猫が言い出したので、名を呼ばれたほうは怪訝そうに彼のほうに視線をやった。
「アーギルシャイアを追っているのでしたね」
「……なぜ知っている」
「レインに聞きました」
「オルファウスさん、そこは賢者の不思議な力とか言っといてくださいよ。箔がつくじゃありませんか」
 それは思いつきませんでしたねぇ、とオルファウスは笑った。そして、続ける。
「アーギルシャイアが焼き払ったミイス村には、闇の神器が安置されていました。『忘却の仮面』といいます。仮面は被った者の力を極限にまで高めてくれますが、その見返りに記憶を奪います」
 セラが目を見張った。黒い瞳でじっとオルファウスを見つめている。オルファウスは新緑色の丸い瞳を、眩しそうに眇めた。ぺろりと鼻をなめて、沈黙する。
「……貴様、神聖語には詳しいか」
 不遜なセラの態度に怒りもせず、オルファウスはくすりと笑った。
「まぁ、あなたたちよりは、詳しいでしょうねぇ」
 オルファウスはエルフなのだ。態度から考えても、相当に古老のエルフだろうとレインは推測している。あるいは、その神聖語が標準語だった頃から生きているかもしれないのだ。
「『サイフォス』とはどういう意味だ」
 レインは隣に腰かけた黒髪の剣士の横顔を見つめる。サイフォス――確か、セラが探している仮面の戦士の名だったと思うが、どういう関係だろうか。
 『仮面』――?
 レインは思いついて、はっと目を見張った。セラの表情に変化はない。
「サイフォス……『日蝕』という意味ですね」
 こともなげに言ったオルファウスに、日蝕……、と呟いたきり、セラは沈黙した。

 
「あぁ? ゴブリンどもがエンシャントに?」
 この不細工な面の猫は、どうにもこの屋敷に人が来ると身を隠したがる。魔人の身でありながら、このような姿に身をやつしているのを見られるのが、恥ずかしいのかもしれない。
 裏庭の畑の近くでネモを呼び出したレインは、例のゴブリンがエンシャントの近くにいないかと尋ねたのだった。魔人の力の大半を封じられているネモだが、自分が管理している――はずの――神器の場所はわかるらしい。といっても、この屋敷を中心にした、ごく近場の気配のみだが。
「来てねぇよ。来てたら直接、俺が引導を――」
「いや、いいわ、そういうの」
 何だよ、とネモは毛を逆立てて、本物の猫がやるみたいにファーッと、小さな牙をむいた。
 本格的に魔人というより猫である。
 直接引導を渡す、と言われても、ネモがそうできなかったから、こうしてレインが駆けずり回っているのだ。引導を渡せるなら、さっさとやっていただきたかったものである。
「ということは、そもそもリベルダムから出ていないということかな。――だとしたら、いよいよまずいぞ」
「アーギルシャイアか……」
 ネモが小さな頭を振る。
「あの女が近くにいるんなら、そりゃやべぇだろうな」
 小鬼どもも死んだな、とネモは他人事のように言う。そもそも、このバカ猫がしっかり神器を管理下に置いておかないから、こんなことになっているというのに。
「うん? 魔人は闇の神器を管理しているんだよね。ということは、アーギルシャイアも管理している神器があるのか?」
 てっきり、アーギルシャイアは聖杯を求めてミイス村を焼いたと思っていたが、ミイス村にあったのは『忘却の仮面』である。
 畑近くの巨木に背を預けながら、レインは足下でちょこんとお座りしている魔人を見下ろした。つくづく魔人に縁のある人生である。
「だから、『忘却の仮面』だ。目覚めて真っ先に取り戻しにいったんだろ」
 しかし、『忘却の仮面』はミイス村で保管されていたと聞く。ゴブリンどもが盗み出すまでは『禁断の聖杯』はロストールにあったというし。何というか、魔人の言う『管理』とは基本的にほったらかしのことを言うらしい。
「お前のかーちゃんは『焦燥の耳飾り』だな」
「へぇ」
 けけけ、とネモはいやらしい笑い方をした。
「かーちゃんの形見だからって、力を借りようなんて思うなよ。あの耳飾りは力を授ける代わりに使用者を闇に引きずり込む」
「使うわけないだろ」
 むすっとしたレインの顔を見上げて、ネモはにやりと笑った。猫のするような表情ではなかった。
「前にお前がヴァシュタールを斃すのは無理だって笑ったが、撤回するぜ。お前はなかなか見所がある」
 せいぜいがんばるこったな、とネモは小さな体を翻して森の中に消えた。今日は外泊らしい。
 猫に認められてもな、とレインは何とも言いがたい気分で屋敷に戻った。裏庭から直接屋敷に通じる勝手口から中に入ると、向かって一番奥の部屋――居間に近いほう――からケリュネイアが出てきた。
「この部屋、セラに使ってもらって。父さんの部屋だけど、今はあんな状態だし。大丈夫よ、掃除はちゃんとしてるから」
 その旨を伝えようと、セラを探してリビングまで来たレインは、ポーチに佇む彼の背中を見つけて足を止めた。腰まである長い黒髪を夜風になびかせた後姿が、残忍な女魔人に似ている気がした。
 不意に、セラが肩越しにこちらを振り向いた。怪訝そうな顔をしている。
「あー……えーっと、寝床。一番手前の部屋を使ってくれ」
「姉が――」
 突然のセラの発言に、レインは口をつぐんだ。玄関を出て、ポーチに並び立つ。セラの立っている辺りの手すりに、彼の愛刀が立てかけられていた。
「姉が魔道アカデミーを卒業して、アンティノ商会に入ったのは給金がよかったせいだ。戦乱で村と親を亡くした俺たちは、幼いころから金で苦労した」
 その姉から突然、連絡が途絶えた、とセラは言った。ちょうど、ミイス村が焼かれる三ヶ月ほど前のことだったという。
「……やはり、アンティノ商会のシェスターとあんたの姉は、同一人物か」
 レインの呟きに、セラは答えなかった。ただ、独りごちるように、ぶっきらぼうに続けた。
「……姉が俺の前に姿を現したときには、もう姉ではなかった。すでに魔人だった」
「は?」
 怪訝そうな顔をしたレインに、セラはゆるゆると頭を振った。彼の長い黒髪が、それにあわせて涼やかな音を立てて揺れた。
 それまでじっと庭の暗がりを睨みつけていたセラは、不意にこちらに視線をよこした。黒玉のような彼の瞳は、感情が読み取りにくかった。
「今、アーギルシャイアを名乗っているあの女の体は、俺の姉シェスターのものだ」
 セラの言葉は今ひとつ要領を得ない。つまり、シェスターの体をアーギルシャイアが操っている、というようなことだろうか。
 その旨を尋ねると、セラはレインの考えを否定した。
「魔人が、姉の魂の領域を侵しているのだ」
 魂というものは、肉体と深く結びついているもので、この魂は気に入らないから別のものを取り入れようというわけにはいかない。その関係は鍵と鍵穴に似ている。鍵穴にあった鍵を使わなければ、錠前は開かない。
 肉体と結びついた魂を無理やりに引っ張り出せば、肉体が崩壊して消滅する。たとえば、あのソウルリープのように。
 そして、ひとつの肉体に宿るのはひとつの魂だ。コップの中に入る水の量は決まっている。もし、すでに水の入ったコップに同じだけの量の水を入れようとするなら、あらかじめ入っていた水は捨てなければならない。
 たとえば、破壊神ウルグがこの世に顕現するためには、器となる肉体の保持者の魂を引きずり出して破壊しなければならない。肉体をとどめたまま魂だけを破壊する――それを可能にするのが、闇の神器なのだ。
 破壊神ですらこの前提をくつがえせない。なのに、アーギルシャイア自身がシェスターであるなどと、いったい誰が思いつくのだ。魔人なのだから人間の常識が通じないと言われればそれまでだが、どうりでいくら考えてもシェスターとアーギルシャイアが離れないわけである。
「どういう経緯で姉の体に魔人が入り込んだのかは知らん。興味もない。だが、これ以上姉の体で好き勝手させるわけにはいかん」
 取り戻す、たとえ何があっても――出会った当初から言っていた言葉を、セラは再び口にした。彼が持つ妖刀『月光』は精神のみを切ることができるという。姉の体を傷付けず、魔人の魂のみを切るつもりだろう。
 だが、魔人の魂がシェスターの体に入り込んでしまった以上、あの中にあるのは魔人の精神だけだ。たとえ、魔人の精神だけを切っても、シェスターは――。
 そのことがわかっているのか聞いてみたい気もしたが、レインは口をつぐんだ。きっと、シェスターの精神が残っていようがいまいが、彼は切るのだろう。それしか方法がないのだろうから。
 どうしようもないことというのは存在する。人の生き死ににはそれが顕著だ。
「それで、サイフォスというのは何者だ」
 レインの問いに、セラが沈黙した。唇を引き結んで、再び、暗く闇に沈んだ庭を見ている。
 月にかかっていた雲が晴れた。月光が走るように庭の緑を照らした。
 不意に、セラが立てかけていた刀を手にした。軽やかな鈴の音にも似た鞘走る音がして、白々とした白刃が月光のもとにさらされた。月の光と銘打たれた刀は、自らの名と同じ光の下では青白い燐光を発しているように見えた。
「……『月光』には対になる聖剣が存在する。『日光』という。俺が唯一認めた男が持っている」
「……なるほど」
 事情は察した。おそらく、その男はミイス村の関係者なのだ。村に攻め込んできた魔人に対抗するつもりだったのか、闇の神器『忘却の仮面』の力を解放した。そして、逆に魔人の手に落ちてしまった。
 仮面のサイフォスがその『日光』の持ち主なのだろう。
「私に必要なのは闇の神器だ。手に入れるために力は貸す。後のことは勝手にしろ」
 アーギルシャイアを野放しにしておくことに危険がないわけではないが、セラにも事情というものがある。あの魔人は彼に任せるのが一番いいだろう。
 見捨てるわけではないが、深入りもすまい。同じく――状況はずいぶん違うが――魔人に肉親を奪われた者であるレインには、彼とはそのくらいの距離がちょうどいい。
「言われるまでもない」
 ぶっきらぼうに言って、セラは美しい刀を鞘に収めた。

 


◇ひとこと◇
 ミイス外発の主人公だと、どうしてもセラとはビジネスライクな関係になってしまいます。そら、ED条件にミイス発って付くわ!

 

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