この世界の片隅で

*オリジナル展開注意*

 リベルダムが陥落してから、二週間ほどが経った。暦は四月を迎え、竜骨の砂漠を近くにする虹色の山脈では、早くも初夏のような陽気である。
 虹色の山脈のふもとに、クロイス家が所有していた古い隠れ家があった。もとはロティ=クロイスが色々と――黒い商品とでもいうべきか――隠していた小さな山小屋である。
 クリュセイスは屋敷を逃げ出してきた使用人の数人と、ここで寝起きしていた。解放軍の残党もいたが、その数はずいぶん減った。戦死した者も多かろうが、それ以上に、クリュセイスと袂を分かった者も多かった。
 クリュセイスは、武力でもって反乱を企てるのではなく、リベルダムに残った難民の援助をしたいと言った。戦いに疲れた者はそれに賛同したが、できない者も多かった。
 どういう心境の変化で彼女がその選択肢を選んだかは知らない。だが、彼女は自分でそれを選んだのだ。誰にそそのかされることもなく。
 レインはその二週間の間、クリュセイスに聞いたアンティノ商会の秘密研究所を探っていた。この隠された研究所はいくつかあって、リベルダムが陥落した影響だろうが、どこもすでに無人の廃墟となっていた。
 アンティノの姿はどこにもなかった。すでに遠くに逃げたのだろうか。
 その日、武装を解いた状態で、レインは隠れ家を出た。小屋の前の開けた場所で剣を振るっていたレーグが、彼女の姿を見止めて手を止めた。
「リベルダムのギルドに行ってくる。中の連中のことを頼む」
 言い置いて、レインは虹色の山脈をリベルダムに向かって歩き出した。
 二週間しか経っていないにもかかわらず、街中はずいぶん落ち着きを取り戻していた。破壊された町のあちこちで、人々の営みが戻ってきている。倒壊した建物の瓦礫の下から品物を拾い集めて市を開いている辺り、さすがは商人の町である。
 リベルダムを攻め落としたカルラは徹底的にこの町を破壊した。リベルダムの象徴であった大時計も、大陸最大の娯楽であった闘技場もだ。おそらくは、リベルダム市民の反抗心を折る意味と、ロストールに対する脅しだろう。
 更地にされてしまった町の至るところで、ぼろで作られた天幕が張られて、多くの人々はそこで暮らしている。街角で始まった炊き出しに、子供たちが真っ先に列を成す。
 幸いにして、冒険者ギルドは破壊を免れていた。大陸一の資産家であるフゴーの力が強く及ぶこのギルドを破壊するのは、帝国にとっても利益のあることではない。聞けば、ほかの市民や豪商からは私財のほとんどを没収したが、フゴーからは何も取らなかったという。彼がへそを曲げて帝国領から脱出し、彼からの納税がなくなるのを恐れたのだ。どころか、青竜軍総出でフゴー美術館の美術品を、ロセンの邸宅に移したというのだから、特別待遇も甚だしい。
 それに何より、冒険者ギルドの本営を潰してしまうと、冒険者が敵に回る。
 相変わらずギルドは盛況である。仕事がなければ食っていけない。日雇いの仕事を求める難民たちが、ギルドに職を求めてきている。冒険者然とした風体のものより、着の身着のままの連中が多かった。
「よぉ、レイン」
 ごった返す人の群れを押し退けながら、カウンターに行き着いたレインを、なじみの親仁が迎えた。
「手紙を受け取りに来た」
「あいよ、ちょっと待ってな」
 親仁は言って、カウンターの奥に引っ込んだ。彼が戻ってくるまで、カウンターから少し離れたところに下がる。壁に張られた難度の低い依頼書を、ぼんやり眺めていると、ごった返す人の群れの中から悲鳴のようなざわめきが起こった。
 何事かと振り向いて、ぎょっとする。
 人の群れの中から、ゴブリンがひょっこりと現れたのである。頭に変な兜を被ったそのゴブリンは、人間の子供くらいの背丈しかない。きょろきょろしながら、
「今日は人が多いゴブね」
 などと、のん気に呟いている。
「ああああああああああっ!!」
 レインの声がギルドの高い天井に反響した。それにゴブリンがぎくりとしてこちらに丸い目を向ける。そして、人垣の向こうにひょっこり出ているレインの顔を見るなり、ぎゃあっと悲鳴を上げた。
「お前らぁ!」
「うわああっ、まずいゴブ。オルナット、マルーン、押すなゴブ。逃げるゴブ」
 ゴブリンはぎゃあぎゃあと喚きながら、身を翻そうとする。
「わかってるゴブ、団長。『押すな』は、『押せ』ってことゴブ」
「団長、自分は腹が減ったでゴブ」
「マルーン、今はそんなお約束をやってる場合ではないゴブ。オルナット、飯が食えなくなるかもしれない危機ゴブよ。今はとにかく逃げるゴブ。ビーストギガースみたいな大女が、いきり立ってるゴブ」
 ゴブリンは三匹いて、割れた人垣の向こうで一番ちっこいのが、ひぃっと小さな悲鳴を上げた。
「ビーストギガース! 怖いゴブ。街中にいていい怪物ではないゴブ」
「誰がビーストギガースだ、ごるぁ! お前ら、聖杯返せっ」
 人語を解するゴブリンに呆気に取られる群集を押し退けながら、レインは彼らを捕らえようと手を伸ばした。だが、そのつめ先をかすめて、ゴブリンたちは人の股をくぐってギルドの出口に突進した。
「待てっ」
 駆け出したレインに群衆が道を開ける。彼女がゴブリンと普通に会話していた驚きか、怒り狂ったレインの顔が本当に恐ろしかったのか――それはわからないが。
 ギルドを飛び出したレインは、港のほうに逃げる小さな三つの影を見つけて、全速力で駆け出した。
 そう、あのゴブリンどもは、レインが冒険者になった当初、オルファウスから話を聞いたしゃべるゴブリンである。闇の神器『禁断の聖杯』を、ロストールの祠から盗み出した。
 駆け出しの頃は手ひどくやられたものだが、それも最初だけだ。次に会ったころにはレインはゴブリンの実力を凌駕しており、あっさり勝てると思ったのだが――。
 あの三匹はとにかく逃げ足が速い。魔物の本能なのか、山野に紛れてしまうと人間のレインでは後を追えない。
 こちらが忙しかったせいもあるだろうが、最近はめっきり姿を見なかった。
 だからこそ、ここで取り逃すわけにはいかない。
 二週間の間にロセンとエンシャントに限って海路は復活している。今まさに出港しようとする船に、三つの影が駆け込むのが見えた。港で力仕事をしているボルダンの男が、船への渡し板を外そうとしている。
「ああああっ、待って。その船、待てぇえええ!」
 レインの声にぎくりとして、ボルダンが渡し板にかけた手を止めた。そのボルダンの脇を通って、船に乗り込もうとしたレインの腕を、ボルダンががしっとつかんだ。
「何をする」
「あんた、乗船券は」
 当然ながら、そんなものは持っていない。レインはバックパックに手を突っ込んで、中の小銭をありったけ引っつかむと、それをボルダンに突きつけた。
「金を払えばいいんだろう」
 横暴とはこのことである。
 ボルダンの非難を背中で聞きながら、レインは船に乗り込んだ。
「どこだ、ゴブリン」
 怒鳴り散らしながら、船室に入っていくレインの後ろで、小さな影がこそこそと船を下りていった。当然であるが、船室に入ってしまったレインがそれに気づくわけがなかった。
 悪行は自分に返ってくるという、見本のような出来事であった。

 
 船はリベルダムを出てエンシャント港に着いた。その船旅の間、とにかくゴブリンを探してレインは船中を駆け回った。残るは貨物だけだが、貨物のすべてを開けて見るわけにもいかない。
 エンシャント港で下ろされた荷を注意深く見張っていたレインだったが、それらしい物は見当たらなかった。船員にも聞いてみたが、ゴブリンを見た者はいなかった。
 まずいな……、人に紛れて下りてしまったかな。
 焦る気持ちを抑えてエンシャントの町に入ったレインだが、ほとんど一日中、港で貨物を見て回った後である。もし、万が一、人に紛れて船を下り、町に入っていたとしても、もう都を出ているだろう。
 それでも、レインはゴブリンたちの目撃者を探して街を歩き回った。
 連中はリベルダムに立ち寄った。空間転移のできる魔人相手に、どこまで常識が通用するかはわからないが、リベルダム近くを根城にしているらしいアーギルシャイアに、その存在を気づかれたかもしれないのだ。
 連中の実力がどれだけ向上しているかは知らない。だが、駆け出しに毛が生えた程度のレインに、あっさり追い抜かれていたくらいである。魔人に太刀打ちできるとは思えない。
 見つかればひとたまりもない。殺されて、聖杯を奪われるのが落ちである。それは何としても避けなければ――。
 ソリアス神像が立つエンシャントの広場を横切ろうとしたときだった。
「――もはや世の終末は止められぬ。救いを求めるのならば、神に祈るのだ」
 聞き覚えのある口上に目をやると、ソリアス神像の台座の下に人垣ができている。思わずそちらに近づいて、呼ばれるようにしてその向こうを覗き込む。背の高いレインは、人の群れの向こうからでもちょっと背伸びをすれば向こうが見える。
 案の定、人の波の向こうにいたのはエルファスであった。聴衆の向こうからひょっこり現れたレインの顔を見止めて、エルファスがはっとした。銀色の視線と目が合った。
 レインが苦笑しながら、片手を挙げて軽く振ると、バツが悪そうな顔をしてそっぽを向いた。
 レインがゴブリン探しに戻ろうとしたとき、政庁のほうから警邏の兵士たちが甲冑を鳴らしながら駆けつけてきた。幾度となく経験してきたお約束のような展開に、レインはいささかげんなりする。それでも、何となく、手を貸さなくてはいけないような気がして、彼女はその場に留まった。
「お前が世を騒がすニセ預言者だな」
 聴衆を無理やり追い払って、兵士はエルファスに槍を突きつける。エルファスはその穂先の鋭さなど目にも入らぬ様子で、彼らに冷ややかな視線を送った。
「……もう用は済んだ」
 おや、とレインは思う。今まで、エルファスがこのように、あっさりと引き下がったことはなかった。
 彼はつんとした態度ではあったが、兵士たちを蹴散らそうとはしなかった。茨が巻きついたような杖を突きながら、広場を去ろうとする。ちらりと、レインに視線を送ってきたが、彼女はそこから何も読み取れなかった。ただ、珍しいこともあるもんだな、とぼんやりとその光景を見ていた。
「待て。はいそうですか、と見送るわけにはいかぬ」
 追いすがった兵士に、レインは慌てた。せっかく穏やかに終わりそうなところだったのに、なぜそんなに事を荒立てようとするのだ、と。
「よせ」
 兵士との間に割って入ったレインに、去りかけたエルファスが立ち止まった。銀色の目をレインに向けている。
「もう去ろうとしている。それでいいじゃないか」
 突然口出ししてきた小娘に、何だ貴様は、と兵士が居丈高に声を荒らげた。それから、ふと、
「……貴様の顔には見覚えがあるな」
 兵士はじろじろとレインをためつすがめつしている。
「確か、元朱雀軍の――追討令をかけられていた傭兵ではないか」
「……追討令は解除されたと聞いたぞ。私を連れて行っても、何の手柄にもならない」
 真実をありのままに言ったレインに、兵士は納得しかねるようであった。レインの右腕をつかんで、ひねり上げようとする。
「だが、話を聞く必要はあるだろう」
「何の話をだ」
 兵士はレインの腕をつかんだまま、押したり引いたりしている。だが、彼女の腕はびくともしない。兵士がぎょっとして、レインの顔を見上げた。その隙に、兵士の手を振り払う。
「放せ」
「貴様、抵抗する気か」
 兵士が身構える。レインは特に身構えることもせずに、じっと彼らを見つめた。どうやら、彼らはどうあってもレインとことを構えるつもりであるらしい。武装はしていないとはいえ、負けるつもりはないが――。
「僕を止めに来たんだろう。彼女は関係ない」
 レインは驚いて自分の左隣を見た。てっきり、とっくに立ち去ったのだろうと思っていたエルファスが、レインの隣に並んでいるのである。沈み始めた夕日に照らされた横顔が、いっそう、少女然としていた。
 レインは慌てた。エルファスはかなり手加減を知らない。戦場ならばいざ知らず、こんな街中で警邏の兵士を殺せばお尋ね者になる。
「待て、よせ。今、彼は関係ない。彼には手を出すな」
「えっ」
 背中に庇ったエルファスが、驚愕に声を上げたのがわかった。思わず驚いて、肩越しに振り返ると、長いまつげに縁取られた満月のような瞳がレインを見上げていた。驚愕と、狼狽と、困惑に揺れている。
「え……?」
 何か、変だっただろうか――レインが自分の行動を思い返そうとしたときだった。
「ごちゃごちゃとうるさいぞ。二人とも逮捕だ」
 兵士の一人が携えた槍を振り下ろした。避けるのは簡単だが、後ろにいるエルファスに当たる。エルファスをかばって反応が遅れた。
「あいたっ」
 がつっという鈍い音がして、レインの額に衝撃が走った。固い木製の槍の柄が、レインの額を割った。右目の上の、生え際がじんじんと痛む。だらりと血が垂れてきたのがわかった。
 ただ、この程度でどうこうなるほどレインはやわではない。むしろ、この野郎とばかりに兵士に殴りかかろうとしたときだ。
 その兵士の体が、後方に大きく吹き飛んだ。放り投げられた人形のように石畳に叩きつけられる。はっとして後ろを振り返ると、エルファスが銀色の瞳を鋭くして兵士たちを睨みつけている。
 まずい――。
 レインはエルファスの腕を取ると、一も二もなく駆け出した。後ろから、狼狽したようなエルファスの声が聞こえたが、それどころではない。
 兵士たちの怒号が背後で聞こえる。それを聞き流しながら、レインはエルファスの腕をつかんだまま、エンシャントの下町の、入り組んだ路地を駆け抜けた。
 やたらめったらに走り回るうち、ライラネート神殿近くの高台に出た。どうやら、神殿の裏を回ってきたらしい。このまま坂を下れば神殿の前庭へ、登れば高台に出る。
「ちょ、ちょっ、ちょっと、レイン!」
 背後からの抗議に、レインははっと気がついて足を止めた。自分の体力が続く限り走るつもりであったが、よくよく考えてみれば、エルファスを連れているのである。どう考えても、彼の体力は低そうだ。
 握り締めていたエルファスの腕を放して振り向けば、夕日に照らされてなお青白い顔をした彼が、肩で息をしている。
「うわ、ごめん」
 レインはエルファスの肩に手を置いて、彼の顔を覗き込んだ。
 そのとたん、エルファスが俯けていた顔をさっと上げた。自分の肩に置かれたレインの手を握り、睨みつけるように強い視線を向けてくる。
 レインはぎょっとして身をのけぞらせた。真っ先に、怒られると思った。
「来て」
「えっ」
 いいから、とエルファスは彼女の手を握り締めたまま、坂を高台のほうへと上り始める。今度は立場が逆になった。
 ぐいぐいとレインを引っ張りながら、エルファスは腹を立てているように、こちらを振り向きもしない。レインはじっと、自分の手を握るエルファスの白い手に視線を注いでいた。
 武器を握るものの手ではない。細い指をしている。だが、意外にも筋張った、男の手をしていると思った。若い娘のような顔をしている割には、力強い手だと。
 あ、あれ――?
 レインは急に恥ずかしさを感じた。何の手入れもしていない――そのような暇はまったくないのだが――自分のがさついた無骨な手が、無性に恥ずかしかった。年頃の娘であるにもかかわらず、爪も磨いていない自分が。
 唐突にエルファスが足を止めた。高台に着いた。向かって右手はライラネート神像を望める崖になっており、左手後方には神殿が管理しているらしい林があった。この林は墓地の裏手に広がる森につながっている。
 目の前にはライラネート神殿の前庭と墓地が望め、その向こうに港と夕暮れが迫る内海が広がっている。エルファスはレインを振り向くなり、地面を視線で示して言った。
「座って」
「えっ、何で」
 レインは自分の顔が赤いことに自覚があった。この夕日に感謝せねばならない。
 狼狽と困惑に慌てふためくレインなど気にもとめない様子で、エルファスは白い面をいつものように無表情にしている。
「君は背が高いから。座って」
「……す、すいません」
 高身長なのがコンプレックスでもあるレインは、背が高いと言われると恐縮してしまう。顔に上った血の気がさめるような気持ちで、レインはすごすごとその場に膝を突いた。
 エルファスは腰をかがめてレインの前に立った。そして、両膝をそろえて跪く格好になったレインの額に手をかざす。その彼の青白い手が、暖かな黄金色の燐光に包まれた。
 もし、この光景を見るものがいたならば、聖者が彼の使徒に祝福を与えていると思ったに違いない。夜と昼を混ぜた空を背負った彼らは、ノトゥーン教会のステンドグラスさながらに美しかったが、それを知るものはこの世界のどこにもいなかった。
 自然と閉じたまぶたの上を透かして、柔らかな魔道の光が目に届く。ほんのりとした温もりを感じながら、ああ、とレインは思い出した。そういえば、額を割られていたのだった。
 エルファスの手から漏れ出した黄金色の光が、糸のように編まれていく。黄金に輝く薄絹が、レインの額といわず体を包み込むようにした。額で感じていた温もりが、全身に行き渡った。
「あ、ありがとう。でも、わざわざ気を使ってくれなくてもいいのに」
 なんせ冒険者なのだ。怪我など茶飯事である。それを勲章とは思わないが、いちいち気にもしていられない。何より、額の傷は見た目こそ派手に血が出ていたが、傷自体は浅く、すでに血は止まっていた。
 レインが気を使ったようにして笑うと、エルファスは顔をしかめた。
「……女の子が顔に傷なんかこさえるもんじゃない」
「すいません……」
 レインはバツが悪くなって顔を俯けた。
 普段から――自分自身を含めて――女扱いされていないのだが、こうも真正面から、女の子、と断じられてしまうと、非常に決まりが悪い。
 平たく言うと、恥ずかしい。
「何であんな風に、僕をかばったりするんだ」
「だって……そりゃあ、放っておけない。だって、エルファスは加減を知らないから。もし兵士を殺しでもしたら、本当にお尋ね者になってしまうよ」
「だからって、君が怪我をする必要はない」
 ぽつりと呟いたエルファスに、えっ、とレインは彼を見上げた。茜色に染まりつつある空を背に、エルファスはしかめ面を浮かべてレインを見つめていた。今にも泣き出しそうな顔をした彼の、銀色の瞳は、空に浮かび始めた月のようであった。
「き、気をつける」
 搾り出すように言ったレインは、エルファスの視線に耐え切れなくなって、さっと視線をそらした。気まずい沈黙が降りる二人の間に、黄昏の風が吹きぬけていった。
 レインは沈黙の重たさに耐えかねて、立ち上がる。吹き抜けていく冷たい風が髪をなぶる。それを払いのけながら、ふと黄昏の海が視界に入った。
「あ、しまった。船が出て行く」
 内海の穏やかな白波が、夕日に黄金のきらめきを返している。夕凪にはまだ早い。港から白い帆を膨らませながら、今日最後の船便が港を出ようとしていた。
「……もう行くの?」
 エルファスが呟いた。彼のその言葉には、いつものような力がなかった。まるで子どもが独り取り残されてしまうのを恐れるような、そんな寂しげな響きがあった。
 そのせいか、レインはその場を動く気になれなかった。今のエルファスには、この高台から身を投げてしまうような危うさがある。杞憂ならばそれでいいが、もしそうでなかったら――。
「いや、行かない」
 レインの返答に疑問を感じたのか、エルファスは彼女の真意を探るような瞳で見上げてくる。
「もう船は出てしまったんだもの。今さら走ったって間に合わない」
 それよりもあなたと話をしよう、とレインが微笑みかけると、エルファスは少し戸惑った様子を見せた。高台の先端にレインと並び立ち、彼女から顔を背けて海のほうを見ている。
「ノエルたちがとても感謝していた。ありがとう」
 エルファスはちらりとこちらに視線をよこした。
「別に……。彼らのためにやったわけじゃない」
 港側から吹き上げてくる強い風に、エルファスの長い銀髪がなぶられて踊っている。潮風が二人の髪を揺らした。
 そう、とレインが微笑ましく思うと、それが伝わったのか、彼は少しだけ不機嫌そうにまた顔を背けてしまった。レインも口をつぐんで、エルファスと同じ方向を向いた。
 西の山に沈み行く夕日は、黄金の塊のようになって金色の光をばら撒いている。その光を浴びた帝都の高い城壁は、溶かした金を塗りたくったように輝いて、背の高い政庁舎は窓ガラスが反射する光もあいまってインゴットのように見えた。
 古びたレンガ色の瓦は紅玉髄さながらに、赤味の濃い橙である。大通りを行く人の群れが、金色の輝きに濃い影を成している。
 砂金をまぶしたような海は、穏やかだった。寄せては返すさざ波が、金の飛沫を上げている。赤味の濃い西の空を、ウミネコが黒い影になりながらニャアニャアとかまびすしく飛んでいる。ぽつんと浮かんだ切れ雲が、赤と橙と、紺と金のマーブル模様に染まっていた。
 町中が、いや、世界中が、今この瞬間に黄昏の色に染まっているのだと思った。
 世界は美しかった。たとえようもなく――。
 帝都の夕景に、ぼんやりと見とれていたレインの隣で、エルファスがぽつりと言った。
「……世界は美しい……」
 レインはエルファスを見た。自分の傍らに立つこの美しい青年と、同じものを見て、同じ感覚を共有している。その事実が何となく――尊いような気がした。
 妙な気持ちの昂ぶりを感じる。沈黙が嫌いなわけではないが、今、ここを支配している空気は落ち着かない。
 エルファスには聞かなくてはならないことが多くある。『システィーナの伝道師』について尋ねてみようか――けれど、そんなことを尋ねたら、この場を壊してしまう気がしてレインは幾度か逡巡した。
 レインがひとりヤキモキしていると、彼女より先にエルファスが口を開いた。
「あそこで姉さんが眠っている」
 計ったように風が止んだ。
 先程までの浮かれたような熱病にかかったような気分は一気に鎮み、現実へと引き戻されたようだった。冷たい墓の土が両肩にのしかかってきたみたいだと思った。
 エルファスが視線で示す先を見やると、彼は高台の下の墓地を見ていた。終わりゆく陽も届かない墓地は、一足先に夜闇の中にあるようだった。墓標が河原の白い丸石のように見える。
「彼には手を出すな、か――」
 ぽつりとこぼれ落ちた呟きに、レインは彼を見つめた。それでも、エルファスはその視線に気づかないのか、じっと眼下の墓地を見つめている。
「姉さんもそう言ってた……。――あの男が、さらいに来たとき、僕を背中に庇って。この子には手を出さないで、って」
 暮れなずむ墓地を見下ろすエルファスの瞳は、しかし、まるで墓地を見ていないようだった。遠いどこか――レインの知らない土地の過去を見ていた。
 エルファスは続ける。
「でも姉さんは逃げなかった。僕が助けに行ったのに……! 僕ではなく、あの男の傍を選んだんだ! それで、殺されてしまった。馬鹿な姉さん……どうして――」
 震える声で虚空に訴えかけるエルファスは、そこで言葉を切ると、ふぅっと長く息を吐いた。それからしばらく口をつぐんだ後、大きく息を吸って、本当はわかっている、と告白した。
「――姉さんが死んだのは僕のせいだ。あの男がさらいに来たとき、僕は何もできなかった。ただ恐怖で震えて、姉さんの背中に隠れていただけだ」
 レインは、この告白がおそらく彼の心の最奥にある闇なのだと感じた。そして、それを――おそらく――レインにだけ晒そうとしている。
 レインは辛抱強くエルファスの次の言葉を待った。もうすぐ夕日が水平線の向こうに沈む。そう幾ばくもしない内に黄金色に輝いていた世界に、夜闇が忍び寄ってくる。
「……あのとき、僕が後宮に会いに行かなければ、姉さんはきっと今も生きてた。これは、僕の罪だ……!」
 レインは目の前の少女めいた青年が、底の見えない闇の中に身を躍らせたように見えた。自分のすぐ傍にいるのに、エルファスの白い体が真っ黒い不気味な闇に飲まれようとしていた。
 思わず手が動いた。レインはエルファスの手を握り締める。エルファスが弾かれたように顔を上げる。涙に濡れた銀色の瞳が、レインを真正面から捉えた。
「そうじゃないよ」
 握り締めた彼の手が、小刻みに震えている。色を失った唇が、戦慄いた。だが、彼が言葉を発するよりも、レインがそうするほうが早かった。
「君に何がわかるって顔をしてる。確かに、私は何も知らないから、これから話すことは単なる推測になる。でも――真実を確かめる方法はもうない。お互い様だ」
 いいね、とレインが念を押すと、エルファスは潤んだ瞳を何度か瞬きさせ、彼女の言葉を待った。
 レインは続ける。
「あなたは、お姉さんの死の原因を自分のせいだと思っているようだけど、私にはそうは感じられなかった。あなたのお姉さんは自分の意志で生き、自分の意志で死んだのだ」
 レインの言葉を受けて、エルファスはぽかんとした。
「誰のせいでもない。どこにも罪はない。ただ、命がけで人を愛した女性がいただけだ」
 愛する人に見返りなんて求めないよ。ただそこにいてくれるだけでいい。
 エルファスの手を握りながら、レインは彼の瞳を見つめた。涙で濡れた彼の双眸は、いっそう満月のように美しかった。
「あなたは嫌だろうけれど、お姉さんはネメ……あの人を愛していた。だから、その人のために何かしたいと思っていた。それが、命がけだっただけだ」
 だから、彼女の死は彼女の意志のままにある――レインが言うと、エルファスは今にも泣き出しそうな顔で頭を振った。その拍子に彼の絹糸のような長い銀髪が、さらさらと鳴った。
「なぜ、わかる」
 エルファスは拒絶を示した。レインを突き放そうとして、彼女の手を振り払う。が、レインはしっかりと彼の手を握って放さない。
 わかるさ、わかる――とレインはエルファスの瞳を覗き込んだ。それから、少しいたずらっぽく笑って、
「今から、あなたが知っていて、私が知らないはずの過去を語ろう。もし、それが合っていたら、私の話に信憑性が増すでしょう?」
 エルファスが口を閉ざして、こちらの言葉を待っている様子を見せたので、レインは脳をフル回転させて、想像した。ネメアはどんな行動を取るだろう。どんな言葉を発するだろう。そして、彼を愛した女は何を思うだろう。
「あなたのお姉さんが誘拐されたときのことだ」
 レインは想像の中で三年前の施文院へと飛んだ。施文院の大教会がどんなものであるかも知らないが、レインは荘厳な古い教会の内陣に立っている。祭壇の前にはエルファスと彼によく似た面差しの、美しい女がいる。幾ばくもせずに拝廊に位置する大きな扉が開いて、黒い甲冑の美丈夫が現れる。バラ窓から落ちる陽の光を浴び、彼の金髪が朝日のように輝くだろう。
 そこで、彼は何を言うのだろうか。
「施文院に突入してきた……ディンガルの獅子は、あなたを前にしてこう言ったのでは? 『お前の相手をしている暇はない。下がっていろ……――それとも、私がやらなくてはいけないのか』って」
 エルファスは目を見開いて、ぽかんとレインを見上げた。レインは彼の反応に小さく頷いて、ほのかに笑みを浮かべて見せた。自分が決して彼の敵ではないことを示すように。
「当たった?」
「なぜ……なぜ、そんなことまでわかるんだ」
 わかるさ、とレインは曖昧に応えて続けた。
「お姉さんはあなたをかばった。『この子には手を出さないで。あなたとともに行きます』――もし、そうしなければ、愛する弟と獅子は交戦し……弟は、殺されていただろう。愛する者同士が戦うことに、優しいあなたのお姉さんは耐えられなかった。そして、彼女はほとんど抵抗せずに獅子に連れられて行ってしまった」
 エルファスは信じられないものを見る目でレインを見つめている。
「彼女の行動は、ある意味では確かにあなたのためでもある。だが、同時に、あの人のためでもある。お姉さんは、同時に二人の男の命を救ったのだ。そして、それは彼女の望みでもあった」
 レインはそこで一度言葉を切った。想像する。もし、自分がそうだったならどうするだろう。目の前に、恋い焦がれた愛しい人が現れたなら、何を思うだろう。
 強く思い描く。レインは再び大きく、荘厳な教会の内陣にひとり立った。今度はエルファスもネメアも、美しい女もいない。正真正銘、ひとりきりだ。静寂の満ちる教会内に、足音が聞こえてくる。振り返ると、ちょうど正面扉が重々しい音を立てながら開くところだった。扉の向こうは真っ暗闇だ。そこから足音だけが響いてくる。暗闇の中から明るい光の下にネメアが――いや、違う。レインが待っていたのはネメアではない。
 バラ窓から落ちる七色の光を浴びて、絹の織物めいた長い銀髪が星色の輝きを見せる。少女のような面差しの美しい青年は、レインの想像の中だけでなく現実に彼女の眼の前にいる。
「やっぱり、お姉さんは自分で、獅子について行ったんだ」
「なぜ……?」
「獅子が好きだったから。愛していたから。一緒になれないとわかっていても、その腕に抱かれたいと思ったから」
 レインの言葉を拒否するように、エルファスが俯いた。その瓜実顔を、レインは両手で包み込む。無理やりに自分のほうを向かせると、彼の月のような瞳から涙がこぼれ落ちた。滑らかな白い頬を伝う涙の粒が、夕日を浴びてきらめく。黄金の、粒のようだった。
「エルファス、お姉さんの死から目をそらしてはいけない。最期まで貫かれた彼女の意志を、あなたが曲げてはいけないんだ」
 エルファスが伏せていた目を上げて、レインを見上げた。涙で潤んだ瞳が、それでもしっかりとこちらを捉えている。
「――皇帝に疎まれ、命がいくつあっても足りないような危険な任務を押し付けられている愛する男のために、彼女は皇后になった。その内に、弟がやってきて、『一緒に逃げよう』と言う」
 エルファスが小さく頷いて、レインの言葉を裏付けた。彼が頷くとそれに合わせて、涙が幾筋もそのすべらかな頬を滑り落ちていく。
「だが、お姉さんは考えた。『ここで弟と一緒に逃げればどうなるだろう』 きっと帝国に追われる。その先頭に立つのは、獅子かもしれない。きっと逃げ切れないし、彼を危険な任務につかせたくない――」
「わかった……もういい。わかった」
 エルファスが頷きながら、レインを見つめた。彼の言葉は自暴自棄になったり、レインの言葉を否定するような響きは一切なかった。むしろ、レインの言葉を飲み込むような、先ほど見た黄金に輝く凪の海のように穏やかだった。
 涙に揺らぐ彼の瞳の中に、今にも泣きそうな自分が映っている。その瞳は、水面に浮かぶ月のようであった。夕焼けに染まる、朱と紫の交じり合う空の下で見たエルファスは、銀細工のように繊細だと思った。
「……本当は知ってた。全部……。でも、認めたくなかった。だって、姉さんがいなかったら、僕は……――僕は、ひとりだ。この世界で、たったひとりで――」
「私がいる。あなたと一緒にいる」
 怒らないでね、とレインはぎこちなく笑った。泣きそうだと思った。悲しいのではない。何か、胸の中で滾るような思いが、涙になって溢れ出そうだった。
「私とあなたはとてもよく似ていると思った。闇の中で、たったひとりだと思ったとき、隣を見たらあなたがいてくれたの……」
 自分の頬を包むレインの無骨な手を握り締めて、エルファスは彼女の顔を見上げた。美しく、繊細すぎるほど優しい青年の瞬く音が聞こえるほどに、白い面が間近にある。
「あなたといると、世界が美しく輝くの」
 ああ、美しい……、とエルファスが応じた。レインの空色の瞳を覗き込みながら、彼女の薄紅色に染まった滑らかな頬を両手で包み込む。
「君のいる世界は、とても美しい」
 レインはまぶたを閉じた。どうしようもなく、鼓動が高鳴ってしかたない。
 お互いの鼓動と吐息と、存在だけが確かであった。黄金色のきらめきの中で、レインはエルファスに口付けを――。

 
「えっ」
 その小さな驚きの声に、レインはぎくりとして目を見開いた。目の前には、驚愕に表情を強張らせたエルファスがいる。
「え……?」
 エルファスは身を引いて、困惑するレインを見つめていた。もともと色の白い顔面から血の気が失せ、今まさに重ねようとした唇が戦慄いている。
 思わずレインも身を引いた。とてつもなく恥ずかしかった。何がどうなったのかわからないが、とにかく恥ずかしいことこの上なかった。胸の中に沸き起こるこの情動が、一人相撲だったのだ。これほど恥ずかしい勘違いがあるだろうか。
 いや、確かに、そういうことは何にも言わなかったけど。そういう雰囲気だったじゃん。そういう、雰囲気だったじゃん!
 必死になって胸中で言い訳をするレインは、耳まで顔を赤く染める。触れそうになった唇をかみ締めて、彼女は思わず顔を背けた。
 羞恥で気を失いそうになったレインに、エルファスは震える唇を開く。
「傷……」
「えっ」
「その、傷……」
 白く細い指が、こちらに向けられた。その指先が震えている。
 レインははっとして首筋を押さえた。走り回ったせいか、首もとの大きな傷を隠すためのスカーフが少し緩んでいるような気がした。口付けを交わそうとするほど間近に寄れば、傷が見えるかもしれない。
 生まれたころ――正確に言えばアスティアに拾われた頃――からある傷だ。それに負い目を感じたことなど一度もなかった。けれど――。
「あ……えぇーっと、ごめん……こんな大きな傷のある女は、嫌、よね……?」
 レインは泣きそうになる。それを堪えるようにわざと笑ったが、引きつったような顔になるばかりだった。
「そうじゃない!!」
 エルファスは悲鳴のような声を上げた。彼の声にレインはビクリと肩が跳ねるのを感じた。それに気づいたのか、エルファスはそらしていた顔をこちらに向ける。ひどく悲壮な顔をしていた。
「そうじゃないんだ。君が謝らなきゃならないことなんて、何もない。君は美しい、とても……」
 すまない、とエルファスは言った。こちらの気持ちには応えられない、という意味だろうと、レインは思った。
 だが、気持ちも何も、それは今まさに始まろうとしていたのだ。レインの頭上で、福音が鳴るところだったのだ。その福音の鐘を、無理やり押さえられたような気分だった。
 思わず俯いたレインの視界の端で、エルファスが一歩引いたのがわかった。
 顔を上げたレインに、涙を浮かべたままのエルファスが微笑んだ。引きつったような、ぎこちない笑みだった。
「姉さんのことを教えてくれてありがとう。きっと、君の言ったことは、正しいと思う」
 それから……と、エルファスは笑った。先ほどと違って、心の底から湧き上がってきたような会心の笑みであった。
「ありがとう……僕の手を取ってくれて。本当に、嬉しかった」
 エルファスはそこで言葉を切った。彼の表情は複雑で、そこから何を考えているかを察することはできそうにない。ただ、次の言葉を発するのをためらっているように見えた。
 ようやく口を開いたエルファスの声は、震えていた。
「君の事はとても好きだ。あ……愛している。でも、一緒にはいられない。――さようなら、レイン」
「ちょっと……待って。待ってよ」
 走り出したレインの目の前で、エルファスが消えた。彼をつかみ損ねたレインの手が、魔道力の残滓をかき乱した。手を開いたところで、そこには何もない。
 魔法で逃げられてしまえば、走ったところで追いつきようもない。けれど、走り出さずにはおれなかった。
 高台から降りる坂を下り、ライラネート神殿の前庭に出た。そこに立つ愛の神ライラネートの白い巨像を見上げる。
 あんたが愛の神ってウソだろう……?
 レインはため息をついた。彼女はここで二度も惚れた男に拒否されている。一人目には態度で、二人目には言葉で。
 日の暮れた墓地には誰もいない。降りたばかりの薄闇の中に、白い墓石が浮かび上がるように整列している。
 その間を歩きながら、レインは何度も何度もため息をついた。
 やがて、墓地の中でも特に特徴のない墓標の前まで来て、彼女は足を止めた。誰もいない広い霊園の中ほどにある、参る者もほとんどいないだろう墓の前で、レインは立ち尽くした。
 墓標の名を見つめながら、ずるい、と胸中で呟いた。
 レインが好きになった人は、みな、この墓の下の女を想っている。いなくなってしまった者とどう争えというのか。
 また、ため息が出た。その場に膝を折り、冷たい墓標に手をついた。そこに温もりや慈悲があるはずもない。ただ、残酷な石の感触と冷たさだけがある。
 見たこともない死者を恨めるほど、レインは器用ではない。レインにとってこの女は初めから墓石だった。この墓の女を憎いと思う気持ちは、まるでなかった。ただ、どうしようもない無力感だけがあった。
「エルファスを闇に落としたくはない。でも、どうしたらいいかわからない……どうしたら……」
 レインの嘆きに、墓石からの返答はない。

 


◇ひとこと◇
 裏タイトル「レインさん、セカンドラブも散る」
 始まってもない恋が終わりました。

 

≪第52話

第54話≫