短編 棚/由々しき事態 解説

 レインが二週間のうちに何をどう考えて結論を出したか。

 
◇棚
 猫屋敷の一戦でぶっ壊れた鉢植え棚のことです。納屋と畑はレインが適当に直しました。

◇ケリュネイア叔母ちゃんと姪っ子レイン
 ケリュネイアはものすごく普通の感覚の持ち主(少なくとも猫屋敷の中では一番一般人)だと思っているので、レインの回答が信じられないんじゃないかと思う。ケリュネイアも捨て子だったし、特に。

 『ネメア』と『レイン』という二人が築き上げたものがあって、たとえば、そのために獅子帝道場やらせたり、魂吸いの指輪を巡って争わせたり、憧れという名の初恋があったり(完全なる黒歴史だけど)、ライラネート神殿での宣戦布告があったり、ランカを継承させたり……。その関係の中で積み上げた信頼や愛情は、嘘偽りではありませんでした。
 レインもそれはわかっているし、ネメアの背中を追い続ける中で彼の人となりを理解し、魂の交流を経て、恨むに恨めないところまで来ちゃってる部分があると思います。

 そもそも、レインはネメアに幻想を抱き、その幻想を自分で打ち壊して、それでもネメアがいいと結論した子なので、どんなネメアでもいいんです。たとえば、ネメアがものすごい変態趣味を持っていたとしても、「あんなに人生つらそうなネメアさんが、すごく楽しそうだ! よかったね、ネメアさん!」って最終的には言えちゃう子。
 そんな趣味持ってないけど(=人生つらそう)

 彼女も自覚していますが、もし、15歳のレインのもとにネメアがやってきて、「お父さんだよ」と名乗られても、きっと受け入れきれなかったと思いますね。

◇父殺しの系譜
 貴種流離譚では最終的に父親を殺す場合が多いんですよね。

 ◇ひとこと◇でも言いましたが、ネメアさんには前科がある。ただ、二回とも父憎しで刃を向けたわけではないので、レインとは状況が違うかな。

 もし、レインがネメアを憎んで向かってきたとしても、ネメアは手加減なしで相手するんだろうな、と思う。殺しはしないけど。

 バルザーに容赦なく槍を突き立てるネメアを、恐ろしいと思ってたレインですが、そんな彼女はもういないんやな……。
 この子も色々あったからね。色々。

 ところで、私が仔獅子を女の子にしたのは、この父殺しの系譜があったからです。
 ネメアの息子とか、絶対親父に反発して、敵対して、最終的に親父殺す未来しか見えない。
 女の子なら……まぁ、何とか……なるかな、と思った。

レイン「ネメアさんと敵対して槍向け合うのは、まぁ、怖いけど、できると思う。やったし。でもお母さんとオルファウスさんはやだなぁ」
ネメア「……何で私には槍向けられるの?」

 自業自得だ。

◇シビアなのか
レイン「えっ、ネメアさんの愛情を計ってるかって? そんな発想はなかったな」
ケリュ「じゃあ、何で城に会いに行かないのよ」
レイン「会いに行くような用事ないし。それに、お城に行くとまた面倒ごと押し付けられる気がする」
ケリュ「ああ、うん」

 「動けるんなら復興を手伝わんかい」って宰相に怒られるから、城には行きたくない。

◇おまけの話
 初代の鉢植え棚の話。

「この辺に、このくらいの棚が欲しいんですよね」
 と、父は言った。自分の胸の高さぐらいで手を動かして、四角く形を作っている。
「鉢植えを置こうかと思って」
「なぜ、私に言うんだ」
 ネメアがしかめ面を浮かべると、それに反して、父はにっこりと笑った。
「作って。棚」
「…………」
 この家において、面倒な仕事と力仕事はネメアの仕事である。エルフである父や妹に力仕事が向いていないのはわかる。だが、こういう面倒くさい仕事まで回ってくるのはなぜだろうか。
「ケリュネイアにやらせればいいだろう。あの子のほうが器用だ」
 ネメアが言うと、父は露骨に顔を青くした。
「あなた、それ、本気で言ってるんですか?」
 ネメアは沈黙した。それから、根負けしたように息をつく。
「……わかった。作るよ」
「ありがとう、ネメア」
 父は、うふふ、と笑って、にっこりと唇を笑みの形に持ち上げた。

 父親の「本気で言っているのか」は、妹に仕事を押し付けようとしていることに対してか、それとも妹が器用だと思っていることに対してかは、推して知るべし。

 ケリュネイアには繊細さがないイメージがある。DEXの数値の話じゃなくて、性格の話。寸法とか丼勘定っぽくって、作り上げたあとガタガタ揺れるとか。
 ネメアもDEXの値自体は言うほど高くないだろうけど、性格が生真面目なので、そういうところはきちっと測って作りそう。


由々しき事態

 エルフたちはそろそろパルシェンを解任したほうがいいのではないか。

ルティ「解任したところでパルシェンが堪えると思って?」

 むしろ喜ぶ。

 
◇竜王戦以後ヴァシュタール戦未満
 時期としては、第106話◆春、来る◆以降ですね。レインが病み上がりを装ってるので、何かその辺です。でもあんまり考えてなかったので、雰囲気で読んで下さい。

◇転送機
 本編ではこっちの都合で出番のなかった転送機ちゃんですが、猫屋敷の物置で肥やしになっていました。
 ケリュネイアやオルファウスさんなら、テレポートでものを運べそうですが、一応、『何だかすごいマジックアイテム』なので、そういう魔法は無効ということにしています。
 じゃあ、どうやって物置に移動させたんだよ、って問題が出てきますが、何にも考えてませんでした。

 力持ち一号二号によって物置から運び出された石の塊は、とりあえず屋敷の裏に積まれています。危ないので、そのうち長男坊が砕いて屋敷の主の漬物石にでもなるでしょう。

転送機「……」

◇エルフの森クィーダ級会議
ギュイエン「おじい様! 今回は絶対に出席していただく」
パルシェン「ええー、めんどい」
ギュイエン「めんどくない!」

 パルシェンは基本的にみんな好きにしたらええやん、という放任主義者。相談には乗ってくれるけど。どうしたらいいですか、って尋ねると、あなたどうしたいですか、って尋ね返してくるようなそんな人。一つひとつ問い返しながら、気がついたらその人のすべき道が見つかってるみたいな。
 ◆猫問答◆のところで書いた(上手くは書けてない)けど、ああやって一緒に考えてはくれるけど、最終的に決めるのはその人っていう人だと思ってる。

 だから、クィーダの会議とか面倒くさくてしかたない。話をしたいなら個別に面談したい。

 あと、場所はどこなのかっていうと、古の樹海の円形に木が生えてるあそこです。エンサイによると、あれ、神々の古戦場らしいのですが、人の目に見えないように何やかんやされたエルフの会議場があるものとしています。
 場所がリューンの森だったらパルシェンは絶対出席しなかったでしょう。嫁さんいるから。たぶん。

◇クィーダたち
 個人的にルーシュって黒髪のイメージあるんだけど、本人は何か黒とか嫌そうだなぁと思います。
 純血エルフたちは金髪碧眼が種族の特徴に設定してしまったので、集まったクィーダたちは色の濃淡の差はあれども、みんな金髪碧眼です。

 ルーシュはエンサイにあるとおり、闇に対して拒絶反応がすごいっていう性格にしました。感情をあらわにすると、そこから闇落ちしちゃうかもしれないってんで、ほとんど感情が表に出ません。ないわけではないだろうけど。
 ルティは保守的で、上から目線が基本な人にしました。エルフがすべての種族の頂点に立ってるのを信じて疑わないような人。別にそんなことないんだけど、エルフが表立って世界に干渉してしまうと、否応でもエルフが世界を支配してしまうから、エルフは表に出るべきじゃないっていう斜め上の発想をしているといい。
 ギュイエンはパルシェンに全部押し付けられて、各森のキャラの濃いクィーダをまとめるのに胃がやられている。

 あと、本来シェーヌがいるはずなんですけど、引きこもってるので出てきてません。

パルシェン「シェーヌは引きこもってていいのに、私は出席しなきゃいけないんですかぁ?」
ギュイエン「あなた、クィーダロアでしょう!」

 ギュイエンの苦労が忍ばれる思いです。

◇大いなるソウル
 大いなるソウルってそんなに貴重でもないな、って思ったりするんですけど。何か、すごいいっぱいいないですか?

 六英雄と忘れられた連中とシルヴァ。
 種族が不明の連中もいるけど、大半は人間でコーンスとダルケニスが一人ずつ。エルフにはいないんですよね。
 エルフから大いなるソウルを持つ者が出てない=始祖エルフに認められてないっていうのは、プライドの高い彼らにとって、不都合な事実なんじゃないかと思う。特にダルケニス(闇に近い種族)から出てるし。
 始祖エルフが無限のソウルを守り、それを与える権限を持っていることは、エルフたちの自尊心を満たす要素だったのかもしれないと考えました。
 保守派のルティが「無限のソウルはエルフの領分」と言っているのは、そのためです。

 一応、レインも人間のくくりに入れていいとは思いますが、彼らから見れば、半魔の彼女は魔人の出来損ないなので、そんなもんがおかしなソウルを生み出してしまったのは、許せないことなんでしょう。

◇彼らが見たもの
 ルーシュはまだ仲がよかった頃の両親の姿でも見たんでしょう。……嫁が好きすぎてヤンデレ発動した挙句、自分の束縛癖を棚に上げて息子を殺そうとする親父なんか救いようないけどさ。
 他の連中が何を見たのかは、よく考えていません。でも、あの光の中で何も感じなかった人は誰一人おりません。パルシェンが考えてほしいのは、レインの危険性よりそこなんだろうなぁ、とか思います。

 レインが闇落ちする可能性はゼロではないけど、彼女の傍には彼女の喜びや苦しみに寄り添ってくれる人が多くいるので、ひとまずは大丈夫でしょう。
 公式で「お気楽ご気楽」といわれちゃうオルファウスさんですから、闇落ちの可能性よりは何事もなく穏やかに過ぎる可能性を取ってくれるのではないかと思います。

◇単位はやれない
 物置の荷物を動かす→シェイドラット(ネズミ)が出てくる、っていうシーンでした。

レイン「戸棚の裏はネズミの卵でいっぱいなんだ」
ケリュ「あんた、本当にINT74ね」

 本当はネモの気配を嫌ってこういう小動物は猫屋敷に近寄らないと思うのですが、こ、子供だったから……(震え声) たぶん、迷い込んじゃったんじゃないですかね(適当)
 ネモはネズミなんか取ってくれないから、迷子の子ネズミはネメアさんがつまんで森に放逐しました。