ミニスカートと革命の女神

 中世ヨーロッパをモチーフにしたジルオールで、ちょっと気になるのがウェイトレスのスカートの長さ。

 膝丈。

 これはどう見ても時代設定にあってません。主人公のミニスカートも結構なもんですが、それにしても、王宮のメイドであるタッチストーンまで膝丈というのはちょっと違和感を覚えます。

 現実の服飾の歴史で考えると、女性のスカート丈が短くなるのは女性の社会進出と彼女らの権利の拡大が、密接に関わっています。これらの現実の服飾史はググるなり、本を読んでいただくなりするとして(ファッションに興味なくてもおもしろいよ!)、これをバイアシオンにも当てはめてみましょう。

つまり、バイアシオンに見られる女性のスカート丈の短さは、ディンガルが発祥である。

 ディンガルは統一戦争が長く、常に国内のどこかが戦争状態にあって、男手を戦に取られていたと推測できます。それが、女性の社会進出の一因になったわけですが、これの最たるものが女性官僚や女性兵士の出現です。

 ザギヴの制服の、ミニスカ軍服。現代で見ても革新的というか、なかなかないデザインですよね。
 これをいつ、誰が採用したのか。
 候補は二人。エリュマルクとバロルです。

 エリュマルクと仮定して考えてみると、彼が皇帝になったのがゲーム準拠で約5年前。そこから国境を越えて大陸全土に文化が伝播する、というのは情報伝達速度として限界があります。現代ならネットでPON☆ですけどね。

 私は、ミニスカ軍服を採用したのはバロルだったと考えています。
 というのは、彼の傍にはすでに働く女性が二人もいたから。サラシェラと彼の妻キャスリオン。私はキャスリオンが主導したのではないか、と考えています。サラシェラはバロルの結婚を機にディンガルを去っているし、キャスリオンでなければならない理由があります。

 前述の通り、バロルが帝位に就いた時代、労働力の要である男性たちは戦争に出ていました。もちろん、バロル(というよりもヌアド)が国土を統一したことで、彼らは戦地から戻ってきたのですが、戻ってこなかったものも多かったに違いありません。
 働き手が減ることは、直接、国力衰退につながります。ディンガルは国力を保つために労働力がどうしても欲しかった。そのためには、女性に働いてもらうしかなかったのです。
 バロルの革命が始まって、さっそく貴族たちの抵抗にあっている中、国の力が衰えるというのは看過できません。女性の働き口として、まず手近な軍(ようは公務員である)から改革しよう、とキャスリオンは考えます。

キャス「職場に着ていく服がない? じゃあ、制服作ればいいじゃない」

 というわけで、制服を作るわけですが、動きやすく、快適で、ファッション性のあるものがよい(キャスリオン自身が女性だから。制服が可愛いとテンションが上がるっていうのは、やっぱりあると思う)という観点からスカート丈が短くなりました。
 もちろん、これは制服だからスカートなのであって、実際、戦場に出るときはパンツ姿であったと思われます。馬にも乗らないといけないし。

 しかし、これがすぐさま受け入れられるかというと、そうではないでしょう。これまでくるぶしまで覆うような格好をしていた女性たちが、いきなり短いスカートをはくのは、大部分は抵抗を感じるでしょう。
 そこで、キャスリオンが主導している、というのが重要な意味を持ちます。ようやくできた統一王朝の皇后、しかも貴族よりも庶民の味方をしているキャスリオンが率先してそういう格好をすることで、広まりやすく、受け入れやすくなります。

 参謀としてバロルと戦場を駆け抜けたキャスリオンは、皇后になってからもあのミニスカ軍服を着て公務に出たり、私服を披露するときも膝丈のスカートをはいたりして、女性の社会進出を応援していたのではないでしょうか。

 キャスリオンはバイアシオンのココ・シャネル(女性のファッションの革命家的な意味で)だったわけです。
 と、ここまでがミニスカート発祥の背景。

 しかし、いくらキャスリオンが人気のある皇后だったとしても、その影響力はディンガルが精々でしょう。つまり、この時点では南部のほうまでミニスカートは伝播していないと考えられます。国境を越えて、文化――特に女性の文化がロストールに伝わるのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
 では、どこで伝わったか、というのはバロルの動乱時しかありません。

 バイアシオンの国境は、軍はともかく、民間人の往来は比較的簡単です。政情不安になったディンガルを逃げ出して、女性たちが南部に入ります。
 当然、南部でも働かなくてはいけませんが、ロストールは男性優位の社会構造をしています。働いている女性だってスカートの丈は長かったでしょう。

 まぁ、そこで彼女らがどう戦ったかというのはわかりませんが、「えー、まだそんな長いスカートで作業してるのー?」「ださーい。くるぶし丈が許されるのは、働かない貴族だけだよねー」というわけで、徐々に平民に浸透していきます。
 当然南部の女性たちの中にも、抑圧から解放されたいと思っている人は多いでしょうし、面倒くさい格好より機能的な格好をするほうが理にかなっていますから。
 こうやって、女性は女性らしい格好を、男性は男性らしい格好(もっといえば、貴族は貴族らしく、平民は平民らしく)を強いられていたロストールに、服装の自由というものがもたらされた。

 とはいえ、ロストールは古い国ですから、すぐさま完全に受け入れられるのは難しかったでしょう。確実に身分の高い連中には受け入れられていないし。
 ひょっとしたらまだ民衆レベルでも過渡期で、黄金主やフェルムは、時代の最先端を取り入れたおしゃれさんなのかもしれない。

 ここで、冒頭のタッチストーンの話に戻りましょう。格式高い王家(王妃)に仕える彼女が、なぜそんな平民レベルの格好をしているのでしょうか。
 それは、エリスが国家運営を一手に担っている、というのが理由だろうと思われます。品位を保たねばならないのも王室ですが、舐められたら終わり、というのも王室です。
 ゲーム開始の時点で、バイアシオンでは働いている若い娘が膝丈や膝上のスカートをはくのは、もう常識というか流行の最先端です。その流行を作ったディンガルと表に立ってやりあわなければならないエリスの懐刀が、流行おくれの格好をしているのはよろしくありません。
 「ロストール、だっせぇ!」と舐められないために、タッチストーンは流行の膝丈スカートなのです。

 ところで、じゃあ冒険者たちのビキニアーマーは何なのさ、という疑問が浮かびます。
 そもそも、女性が長いスカートをはいていたのは男性の目(もっといえば性的な犯罪)から、彼女らを守るという側面がありました。つまり、自分の身さえ守れれば、好きな格好をしていいのです。
 冒険者は国家にはとらわれないかわりに、国家からの保証もない。いざというとき、誰かが守ってくれる、というのが期待できません。
 あのような露出の多い格好をしている女冒険者は、彼女ら自身のいざというとき己で身を守れる実力と自信の表れなのでしょう。

 現実の私たちの歴史にミニスカートが登場したのは1960年代。つい最近の出来事です。中世ヨーロッパを元にした世界観から考えると、かなり時代を先取りしているといえます。

 バイアシオンにおけるミニスカートの発案者はキャスリオンである――身分や年齢を問わず、男女の別なく、どんなものでも努力次第で成功できる社会を目指した、革命家のバロルの妻がそういう思想の持ち主だったというのは、ありえる話ではないでしょうか。

 ……と格好よくしめたところですが、無印版だと大体みんな丈の長いローブやスカートを着用しているので、この考察は何の意味もないといえます。本当にありがとうございました。