バルザーの話

 バルザーは人間の試作品とされ、至聖神いわく「完璧すぎて世界が『停滞』するから失敗」した。
 完璧だから失敗とはこれいかに。

 生物が動くためには欲が必要です。しかし、バルザーにはこれがない。たとえば、もっとも基本的な「性欲・食欲・睡眠欲」の三欲求すらないでしょう。食・睡眠は、生命に関わる欲求ですがバルザーはどうやっても死なないし、種を存続させるための性欲もやはり死なないので必要ない。
 何もない空間にぽつんと一人放り出されても、バルザーは死なないし発狂しないし、普通に生きていけるわけです。

 そら、何かを生み出そうとはせんよ。至聖神ちゃんはバカなの?

 まぁ、至聖神をかばうわけではないけど、過酷な大地を開墾していくために人間を作ったと考えれば、丈夫なほうがいいでしょう。丈夫過ぎて過酷なまま生きていけるけど。やっぱりバカなのかな……せめて寿命はつけよう。

 ところで、なぜバルザーは男性型なんでしょうか。増えるためには女性が必要になります。至聖神が女性の試作品も作っていた、という説もなくはないのですが、私はバルザーは無性生殖が可能なんじゃないだろうかと考えています。
 無性生殖といっても別にアメーバのように分裂して増えるとかそういうことではなく、創世記のアダムのように自らの体の一部を基礎として女を作らねばならなかったのではないかと(正確に言うと、あれはヤハウェがやったんだけど)。
 けれども、バルザーには前述のように欲がない(というか生物として増える必要がない)から、自分のパートナーを作り出すことも放棄してしまった。
 「これではダメなのか」と思った至聖神は、次に人間を作ったときにはそういう機能はつけないようにして、単純に男女を作ったと。至聖神はドジっ子なのかもしれない。

 次の問題として、その失敗作を何でわざわざ取っておいたのか、ということ。
 バルザーが誕生したのが始原口伝で言う第二夜と第三夜の間。そこからウルグが闇に落ちるまで、相当な時間が空いています。
 ここは至聖神がもったいない精神を持っていて、バルザーは至聖神の命令で色々パシらされていた、で片付けておきましょうか。
 たぶん、ウルグが英雄神をやってるころから仕えてたんじゃないだろうか。

 その後、バルザーはウルグ側へスパイとして送り込まれています。「神々の争いを激化させるため」とあるが、その目的はよくわからない。とっくに滅んだ神々の争いを激化させて何になるんだろう? よっきゅんか、てめぇは。

 至聖神の存在意義から考えると、ウルグ側についたバルザーが闇の勢力を拡大させることで、ノトゥーン連中が「闇の危険が危ないから、人間たちもっとがんばれ」と人間に対して鞭を振るう→人間たちの創造パワーが上昇→至聖神ヘブン状態、ということなんでしょうけど。
 正直、ノトゥーンって何もしてないよね……?

 バルザーの役目は光と闇をうまいこと煽りつつ、この二つ勢力の争いが永遠に続くようにする調節役だと考えられます。
 しかし、バルザーはウルグ側に傾いて、至聖神に与えられた役目をまっとうするか否かで揺れ動いているようです。スパイとして一番やっちゃいけない状態に陥っているが、それを至聖神が知らないということは考えられません。
 つまり、至聖神は裏切り者をあえて飼っているといえます。

 バルザーがウルグ側に傾いたのは、ここ最近のことではないでしょうか。具体的にいえば、エスリンと出会ってから。
 どう考えても情緒面で欠落したものがあった(というよりそういうものは不要だった)バルザーは、愛情や情欲を知ることで、ウルグがなぜ闇に落ちたかを理解できたのではないかと思います。というか、それ以前のバルザーにウルグ側に傾く理由がありません。
 システィーナを失って闇に落ちたウルグと、エスリンを失った自分を重ねて、ウルグに加担したくなった、と考えると自然です。
 1100年代~1200年代のバルザーは、至聖神の「光と闇の争いを起こして創造のエネルギーをフル回転させろ」という命令と「ウルグの気持ちもわかる」という同情心と「だが、ウルグを復活させれば息子に宿る」という親心とで、がんじがらめになっているのかもしれません。

 ゲーム中のバルザーの動向を見ると、ウルグ側に偏っているように見えるますが、ウルグに心から尽くそうとしているようには見えません。バルザーはウルグの復活をとどめようとするアスティアを罰していないし、むしろ彼女の行動に同調しています。
 そもそも、自分の息子がウルグの器にふさわしいのなら、オルファウスさんのもとから掠め取って、それにふさわしいように育てればよかったのです。オルファウスが守っていた、というのも確かにあるでしょうが、闇の円卓騎士次席が賢者に遅れを取るでしょうか。……取るだろうなぁ、相手はオルファウスさんだし。(この人、反則ギリギリの手を使ってくるだろ。汚いな、さすがパルシェンきたない)

 話を戻しましょう。バルザーは息子を奪い返すことすらもしなかった、と考えたい。城塞都市跡でバルザーがなぜネメアを殺さなかったのかは、ウルグ復活のためにというより単純に殺せなかっただけのように見えます。だからこそ、運命の前に個の力は無力だと思ったんだろう。何か運命に対してあらがっていないと、あのセリフは出てこないでしょう。

 バルザーのこの混乱と反乱は、至聖神にとって嬉しい誤算だったといえます。
 バルザーは作られた段階で完成されていたために、成長する=何かを生み出すことはないはずでした。ところが、エスリンと出会って、バルザーは創造の輪を回し始めます。愛情を知り、情欲を覚え、自分の意志で水面下ながらも至聖神に反乱を起こしている。
 至聖神にしてみれば、これはもうヘブン状態。バルザーの創造の輪はフル回転している。
 ウルグがネメアに宿るという運命は、バルザーの苦悩を加速させ、それを何とかしようともがこうとするそのさまが、至聖神にはたまらない。自分の意志を持ち始めたバルザーを自動復活させているのは、そのためでしょう。
 汚いな、さすが至聖神きたない。

 というわけで、何が言いたいかというと、「エスリンってすごいね」というお話。